人形町の本
夏真っ盛り。連日の猛暑でちょっとまいってしまいそうですけど、そんなときこそちょっとした工夫や心づかいで楽しく暮らせますよね。
先日久しぶりのご来店のお客様が、素敵なお花をくださいました。店頭に飾らせていいただいたのですけど、お店がいっぺんに明るく、そして緑が涼やかに見えます。

「ほんとはバラとか普通の花選ぼうとしたらね、ねえさんが、あのお店にはこっちのが似合うわよって言うからさ。花の名前、なんとかっていうんだけど、覚えてないや(笑)」
みんなでああだ、こうだと言ってこの花は「西洋朝顔」ってことになりました(笑) 他のお客様に「あれ、何の花?」と聞かれたら、堂々とそう答えていたのですけど、
「でもさ、朝顔っていうけど、一日中咲いてるよね?」
「あっ、そういえば…。一日顔だねえ?」
ちょっと疑問がわいて心配になった姉は、いただいたお客様にもう一度電話して、お姉さまに教えていただけないかとお願いしました。そしたら、もうめんどくさい、買った花やさんに直接聞いてくださってわかりました。この花は夾竹桃の仲間で、「マンデビラ」というのだそうです。ネットでチェックしてみたら、イギリス公使のマンデビルさんにちなんだ名前で、原産は南米ボリビアだとか。なんだかインターナショナル…。でもなぜか、ちょっと和風のうちのお店に似あいます。
そういえば、洋食って西洋料理を元にして、日本独特の発達をしてきたお料理なんですよね。マンデビラが似合うのもそういうわけかしら。
洋食の町、人形町。ハイブリッドが似合います。そんなわが町について、軽妙につづった本がございます。お店のお客様が出版された本なんですが、一部譲っていただいて、店頭に置きました。

その中にこんなエピソードが。。。
-----
…このおやじさんはがっちりとした筋肉質のような体型だが、背があんまり高くないのをカバーするため、高下駄ではないが、歯がほどほどに磨り減った下駄を履き、自身の身長とのバランスを取っている感じだった。
この高下駄もどきは意外なところで効力を発揮することがある。近くに「たいら」という撞球場(ビリヤード)があって、このおやじさんは常連であった。お客が一段落する時間になるとよく顔を見せていた。
撞球の腕はよく、マッセなどの高級技術を使う場面になると、高下駄のままひょいと台の縁に腰を掛けキューを真っ直ぐに立て、捻りだまなどの回転を与え得点にする。また、寄せという大量得点に結びつく技術も持っていて、四ッ玉を台の隅に寄せると瞬く間に高得点となる。それと台の上に身体を被せる様に乗せ、鼻緒でバランスをとりながら、下駄の歯をフロアーに軽くつけ、リストを立ててキューを突き出す。時々親父さんと、同じ台でプレーをすることがあるが、的確に読む玉の動きに、私は歯が立たなかった。チョークをキューにつけるしぐさも、ちょっと粋で下町旦那の風格があった。突き出すキューの捌きと、とんかつを揚げる、ここぞのタイミングとは、同じ感覚ではなかっただろうか、さっと油をきる手捌きと、思うように四ッ玉を操る技が小気味よく決まり、いかにも美味しいとんかつを上げている感じと重なる。
-----
ほめすぎかな?(笑) そう、これは先代の父のことなんですねえ。娘の私たちでも知らなかったことです。そんなにビリヤードうまかったんか。面白いなあ。父はいつも仕事中高下駄履いていて、カウンターの内側のまな板を並べた作業台の高さも、すべてその高下駄をはいた父に合わせて作ってありました。その狭い厨房の中で父は器用にキビキビと動き回ってました。ほめすぎだけど、そういう「臨機応変」(父の口癖でした)な動きができる器用さのある人でしたね、確かに。どんな道具も、包丁の柄だろうが、高下駄だろうが、なんでもうまく利用して狭いところで最大限の効果をあげる。やむを得ずだったとも言えますけど、父ならではのエピソードだと思います。
他にもいろいろなエピソードが載っています。タイトルが「2010」。昔のことだけでなく今のことも書かれていますし、ご興味のある方は、ぜひお手に取って1ページ2ページと読んでみてください。もしご本が欲しい方がいらしたら、お申し付けください。筆者の方に連絡を取って手に入れられると思いますので。
人形町は小さな町だけど、いろいろな人とその歴史が息づいています。きっとそれはどの町でも同じなのでしょうけどね。少しじっくり見つめてみたら、自分でも思わぬ発見があるのかもしれませんよ。「自分の町」
先日久しぶりのご来店のお客様が、素敵なお花をくださいました。店頭に飾らせていいただいたのですけど、お店がいっぺんに明るく、そして緑が涼やかに見えます。

「ほんとはバラとか普通の花選ぼうとしたらね、ねえさんが、あのお店にはこっちのが似合うわよって言うからさ。花の名前、なんとかっていうんだけど、覚えてないや(笑)」
みんなでああだ、こうだと言ってこの花は「西洋朝顔」ってことになりました(笑) 他のお客様に「あれ、何の花?」と聞かれたら、堂々とそう答えていたのですけど、
「でもさ、朝顔っていうけど、一日中咲いてるよね?」
「あっ、そういえば…。一日顔だねえ?」
ちょっと疑問がわいて心配になった姉は、いただいたお客様にもう一度電話して、お姉さまに教えていただけないかとお願いしました。そしたら、もうめんどくさい、買った花やさんに直接聞いてくださってわかりました。この花は夾竹桃の仲間で、「マンデビラ」というのだそうです。ネットでチェックしてみたら、イギリス公使のマンデビルさんにちなんだ名前で、原産は南米ボリビアだとか。なんだかインターナショナル…。でもなぜか、ちょっと和風のうちのお店に似あいます。
そういえば、洋食って西洋料理を元にして、日本独特の発達をしてきたお料理なんですよね。マンデビラが似合うのもそういうわけかしら。
洋食の町、人形町。ハイブリッドが似合います。そんなわが町について、軽妙につづった本がございます。お店のお客様が出版された本なんですが、一部譲っていただいて、店頭に置きました。

その中にこんなエピソードが。。。
-----
…このおやじさんはがっちりとした筋肉質のような体型だが、背があんまり高くないのをカバーするため、高下駄ではないが、歯がほどほどに磨り減った下駄を履き、自身の身長とのバランスを取っている感じだった。
この高下駄もどきは意外なところで効力を発揮することがある。近くに「たいら」という撞球場(ビリヤード)があって、このおやじさんは常連であった。お客が一段落する時間になるとよく顔を見せていた。
撞球の腕はよく、マッセなどの高級技術を使う場面になると、高下駄のままひょいと台の縁に腰を掛けキューを真っ直ぐに立て、捻りだまなどの回転を与え得点にする。また、寄せという大量得点に結びつく技術も持っていて、四ッ玉を台の隅に寄せると瞬く間に高得点となる。それと台の上に身体を被せる様に乗せ、鼻緒でバランスをとりながら、下駄の歯をフロアーに軽くつけ、リストを立ててキューを突き出す。時々親父さんと、同じ台でプレーをすることがあるが、的確に読む玉の動きに、私は歯が立たなかった。チョークをキューにつけるしぐさも、ちょっと粋で下町旦那の風格があった。突き出すキューの捌きと、とんかつを揚げる、ここぞのタイミングとは、同じ感覚ではなかっただろうか、さっと油をきる手捌きと、思うように四ッ玉を操る技が小気味よく決まり、いかにも美味しいとんかつを上げている感じと重なる。
-----
ほめすぎかな?(笑) そう、これは先代の父のことなんですねえ。娘の私たちでも知らなかったことです。そんなにビリヤードうまかったんか。面白いなあ。父はいつも仕事中高下駄履いていて、カウンターの内側のまな板を並べた作業台の高さも、すべてその高下駄をはいた父に合わせて作ってありました。その狭い厨房の中で父は器用にキビキビと動き回ってました。ほめすぎだけど、そういう「臨機応変」(父の口癖でした)な動きができる器用さのある人でしたね、確かに。どんな道具も、包丁の柄だろうが、高下駄だろうが、なんでもうまく利用して狭いところで最大限の効果をあげる。やむを得ずだったとも言えますけど、父ならではのエピソードだと思います。
他にもいろいろなエピソードが載っています。タイトルが「2010」。昔のことだけでなく今のことも書かれていますし、ご興味のある方は、ぜひお手に取って1ページ2ページと読んでみてください。もしご本が欲しい方がいらしたら、お申し付けください。筆者の方に連絡を取って手に入れられると思いますので。
人形町は小さな町だけど、いろいろな人とその歴史が息づいています。きっとそれはどの町でも同じなのでしょうけどね。少しじっくり見つめてみたら、自分でも思わぬ発見があるのかもしれませんよ。「自分の町」
スポンサーサイト